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ももクロめし(123)


ももクロめし 第123弾

ジョバンニの姉さんがつくった「トマト料理」

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「お母さん。いま帰ったよ。工合悪くなかったの。」
ジョバンニは靴をぬぎながら云いました。
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。
今日は涼しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。」

ジョバンニは玄関を上って行きますと
ジョバンニのお母さんがすぐ入口の室へやに白い巾きれを被って寝やすんでいたのでした。
ジョバンニは窓をあけました。
「お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。」
「ああ、お前さきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」
「お母さん。姉さんはいつ帰ったの。」
「ああ三時ころ帰ったよ。みんなそこらをしてくれてね。」
「お母さんの牛乳は来ていないんだろうか。」
「来なかったろうかねえ。」
「ぼく行ってとって来よう。」
「ああ、あたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり。
姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。」
「ではぼくたべよう。」
ジョバンニは窓のところからトマトの皿をとってパンといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました。
「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

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『銀河鉄道の夜』は、ももクロちゃん達の主演映画『幕が上がる』の中で
主人公の高校演劇部員たちが演じる演目。

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チキンカチャトゥーラ

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胡桃パン

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こら! 百田!

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「っていうか、戯曲を書くってことは、だぶんにじみ出てくるものがあるって信じることなんだよ。」
なんだか欺されたみたいだけど、でも吉岡先生の言葉を信じてみよう。
だって、いままでの大人は、こんなこと言わなかったから。
「君たちの等身大の悩みや苦しみや喜びを書け」と言われたことはあったけど、
「そんなものは、私に聞かされても困る」という教師には初めて会った。
私は、この人を信じてみようと思う。
家に帰って、また台本の続きを書いた。
取り立てて面白くない、私たちの生活を、分かりやすく切り分けもせず、解釈もせず、
主人公たちの台詞に乗せて、そのままに書いてみる。



吉岡先生はよく、「リアルとフィクションの境目」と言う。
それを曖昧にして、観客に、本当だか嘘だかわからなくする。
全部を本当のことだけで構成しても、それでリアルになるとは限らない。



「もちろん世の中には、何度演技をしても新鮮さを保てる人がいます。
そういう人を世間では天才と呼びます。でも、みんなは天才じゃないからね」
「みんなは天才じゃないからね。あ、もし天才だったら、ゴメンね」
というのも吉岡先生の口癖だ。
それからこんなことも言っていた。
「私なんかも経験あるけど、いろんな演劇教育って、たいてい『天才』をつくろうとしてるんじゃないかって思うのね。
そういう、何度やっても新鮮さが保てるような感性を磨くとかって言うんだけど、そんなの無理だと私は思った。
感性は教育で磨けるものじゃないから。
第一、そんな天才なら、教育をする必要もないし。
それよりは、普通の才能だけを持った私たちには、きちんとした理論とか、安定してできる演技法の方が、
たぶん俳優には嬉しいと思う。」




「『銀河鉄道の夜』って、結局のところ『夢落ち』だよね。
宮沢賢治さんがあれを書いた頃は新しかったんだろうけど、いまの作家がこれを書いたら
少しださいかもしれない」
「うん、私もそう思ってる」
「さおりの書いてくれた台本は、そこのところはけっこうおしゃれになってるんだけど
なんだかこう、もっと、『夢だけど夢じゃなかった』って感じになるといいんじゃないかな」
「夢だけど、夢じゃなかった」
「え、知らない?」
「なんだっけ、それ?」
「『トトロ』でしょ」
「あ、そうか」



博士:じゃあ、君たちも、たくさん勉強してください。
カンパネルラ:あの、たくさん勉強すれば、本当の幸せを見つけられますか?
博士:うーん、さぁ、それはどうだろう。
カンパネルラ:え?
博士:ただ、たくさん勉強をすれば、本当の幸せを見つけたときに、それを逃がさないかもしれないね。



「思い出して、小っちゃく謝るのはなし。反省はあとで、みんなで、一緒に」
全員が声を揃えて「はい」と答える。
「小っちゃく謝るのはなし」というのは、部内で決めたルールだ。
みんな、稽古のとき、ちょっと何かあると、すぐに謝って「ごめんなさい。次頑張ります」とばかり言うので
吉岡先生が「謝る必要ないから、ちゃんとやって。
悪かったのは自分だけの責任じゃないかもしれない。
他に原因があるかもしれない。
だったらきちんと全体で問題を把握する。
すぐに謝っちゃうのは、逆に責任逃れだよ。
反省すべき点があるなら、全体で反省を共有して、
全体で一緒に対策を考える習慣をつけよう」
と言って、そういうルールが決まった。




「大人になるということは、人生のさまざまな不条理を、どうにかして受け入れる覚悟をすることです」
何の授業だったか、ずっと前に滝田先生から習ったような気がする。

ジョバンニは、親友カンパネルラの死を受け入れていく。
いや、本当は、夢の中で最初にカンパネルラに出会ったときに、その髪の毛が濡れていたときに、
もうジョバンニは、カンパネルラがこの世にいないことはわかっていたんだ。
でも、親友を失う辛さ、その理不尽さに耐えるためには、
宇宙を一周巡るほどの旅が必要だった。


『幕が上がる』 平田オリザ




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(『幕が上がる』)一気に読みました!
スタニスラフスキーに『俳優修業』という役者の教科書みたいな本があるけれど
これはまるで『演出修行』ですね。
それでいて青春小説。
勉強になりました。

堺雅人











by ruby0806 | 2016-06-14 12:12


日々の食事の記録です。


by ruby0806

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