醤油めし
夕食は、ホテルの天ぷら「山の上」へ行く。
ここの調理主任の近藤文夫君は、まだ二十代のはじめに、このホテルの天ぷらを、ほとんど「独学」で揚げはじめ、苦労を重ねて今日に至った。
その苦労は、いま見事に仕事と人柄の上に実っている。
苦労が実る人と実らぬ人。このちがいは、同じ苦労をしてきても天と地の相違がある。
ここの天ぷらもうまいが、御飯もうまい。ちょうど他に客もいなかったので、天ぷらの後で
「君には悪いんだが、御飯に醤油をたらして食べたいんだよ」
いうや、近藤君がニッコリして、
「あれは、うまいですからねえ」
そういってくれた。
『池波正太郎の銀座日記』より
数ある池波先生のエッセイの中でも、特に好きな一文。
「醤油かけごはん」のオーダーにニッコリと応じる「天麩羅の神様」もさることながら、「山の上」常連中の常連ともいえる池波先生が「他に客がいない」ことを確認し、なおかつ「君には悪いんだが」と前置きしてから頼むところに、池波先生の細やかさが感じられて、10代の頃からこういう大人の食べ方・飲み方に憧れていました。
だからというわけでもありませんが。
「醤油」かけごはん。
天ぷらを塩で食べるときには、よくつくるメニューです。
天丼だれと違い、あっさりしている分、飲んだ〆には具合がいいです。
ここの調理主任の近藤文夫君は、まだ二十代のはじめに、このホテルの天ぷらを、ほとんど「独学」で揚げはじめ、苦労を重ねて今日に至った。
その苦労は、いま見事に仕事と人柄の上に実っている。
苦労が実る人と実らぬ人。このちがいは、同じ苦労をしてきても天と地の相違がある。
ここの天ぷらもうまいが、御飯もうまい。ちょうど他に客もいなかったので、天ぷらの後で
「君には悪いんだが、御飯に醤油をたらして食べたいんだよ」
いうや、近藤君がニッコリして、
「あれは、うまいですからねえ」
そういってくれた。
『池波正太郎の銀座日記』より
数ある池波先生のエッセイの中でも、特に好きな一文。
「醤油かけごはん」のオーダーにニッコリと応じる「天麩羅の神様」もさることながら、「山の上」常連中の常連ともいえる池波先生が「他に客がいない」ことを確認し、なおかつ「君には悪いんだが」と前置きしてから頼むところに、池波先生の細やかさが感じられて、10代の頃からこういう大人の食べ方・飲み方に憧れていました。
だからというわけでもありませんが。
「醤油」かけごはん。
天ぷらを塩で食べるときには、よくつくるメニューです。
天丼だれと違い、あっさりしている分、飲んだ〆には具合がいいです。
by ruby0806
| 2011-02-08 18:44